映画「お父さんと伊藤さん」を見ました(ネタバレ)感想

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こんにちはエルチ(@elchi3000)です。 

 外国航空会社の機内で見る映画って、今劇場で公開中の物があったりワクワクしてました。でも今年から足繁く劇場に通うようになってからは、やっぱりこれから劇場で見れる映画は劇場で見たいと思うようになりました。また外国映画を日本語吹き替え版で見るものもったいないと思うようになりました。

1月と3月にタイエアを使って出張した際はこの「お父さんと伊藤さん」を1回づつみました。
2016年公開でDVDはまだの邦画ということで機内で観るべき映画だと思ったのであります。

監督 タナダユキ  原作 中澤日菜子 脚本 黒沢久子
キャスト 上野樹里山 中彩 / リリー・フランキー 伊藤康昭/ 藤竜也 お父さん/ 長谷川朝晴山 中潔/ 安藤聖山 中理々子/


お父さんと伊藤さん(2016年)

★★★☆☆(70点)

面白かったです!タナダユキ監督は「ふがいない僕は空を見た(2012年)」 が特に好きでした。
 今回も上野樹里さん演じる彩のホワーッとした感じのまま年を重ねた女性が主人公で、兄夫婦とうまく行かなくなった父親が、突然同棲中のアパートに引っ越してくるお話です。

 同棲相手の「伊藤さん」はリリーさんなわけですが、コンビニ店員をしていて年下の店長にけっこうな怒られ方をしているだめな男です。こりずにバイト中雑誌を読んでいる伊藤さん。それをみて同僚のおばさんが「あの男きっとすごいわよ(ニヤリ)」と彩に言ってくるシーンなどはなんとも言えない嫌な感じで、「ふがいない僕は・・・」を思い出して、今回、上野樹里さんがあの映画の田畑智子さんのように!? などと勝手な想像をしてしまいました。そして其の方面の伊藤さんの凄さは以後映画には全く出てこないのでした・・・

 元教師で口うるさい、お父さんとの生活をするにつれ、伊藤さんの只者ではない部分がちらほら見え始めお父さんからも不思議な信頼を得てきます。
 最近DVD化した「SCOOP」といい、リリーさんとても良いですね。ここらで名作「ぐるりのこと」も見返しておきたくなりました。

 父親が介護ホームに入ると言い出す前の出来事を描いている、この映画で思ったのは、このような「いつか来る日」に対して、家族としての自覚の無さが怖いなと思いました。彩はそういう事態になるまでほとんど何の準備もない。いつか自分も行く道だという自覚もない。一方、長男は覚悟しているようだけどが肝心の父親の気持ちと噛み合っていない。お父さんはお父さんで、妻無き今でもわがまま放題おやじ。

 迫りくる「その日」に対しバラバラすぎる家族の様子は一種ホラーでした。このあたりの「ふがいなさ」はさすがに面白かったです。

 その状況に伊藤さんがひょうひょうと絡んで、何とも可笑しく、だんだん心強くもなってきて、中家の人々に辛辣にと言い切るシーンはなんとも緊張感みなぎるシーンでした。
 終盤彩も父と3人で住む計画も立て始め、ラスト、彩が走り出すと同時に号泣してしまいました。(2回も・・・)

 しかし、正直のれなかった部分もいくつかありまして・・・

何故伊藤さんがそんな人なのかの手がかりはほとんどなく、携帯電話の使用履歴から家出したお父さんのいる場所を特定したり、やたらとボーリングがうまかったりするくらいでちょっと説得力にかけるかなと思いました。

 残念だったのは、ラストに向けてセカセカと畳み掛けられてしまった感覚が強く残ってしまいました。
お父さんの万引きグセと箱の中身。雷。最後までお父さんのパーソナリティーが理解しきれず終わり、ちょっ。ちょっとまってくれー!という感じでした。

 思えば「四十九日のレシピ(2013年)」などもいまいち乗り切れなかった自分がいたわけですが、この映画での上野樹里さん、リリーさんの対話は大好きだったので、タナダユキ監督、今後も楽しみにしたいと思います。

原作本