アピチャッポン・ウィーラセタクン監督「ブンミおじさんの森」を見た感想(ネタバレ)

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こんにちはエルチ(@elchi3000)です。

もうすぐ公開される空族の新作「バンコクナイツ」。

昨年、甲府の桜座で凱旋上映を見に行った際、冨田監督と脚本の相澤さんとのトークセッションで、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督とそのパルムドール受賞作「ブンミおじさんの森」の話が出てきまして、オススメされておりました。

「バンコクナイツ」については凱旋上映でガツンとやられて大好きだったわけで、今回の公開を機に改めて見に行こうと思っております。その前の予習ということで先日「ブンミおじさんの森」を見ましたので感想を書きたいともいます。

監督同士の過去のトーク記事が有りましたので貼っておきますね。

アピチャッポン・ウィーラセタクン×空族・富田克也 「自由に開かれたプラットホームのような映画を作りたい。」

『ブンミおじさんの森』
UNCLE BOONMEE WHO CAN RECALL HIS PAST LIVES

2010年/114分/1: 1.85/カラー
監督、製作、脚本:アピチャッポン・ウィーラセタクン
撮影:サヨムプー・ムックディープロム
出演:タナパット・サーイセイマー、ジェンチラー・ポンパス、サックダー・ケァウブアディー、ナッタカーン・アパイウォン

“Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives” (Official Trailer)

★★★★☆ 80点

私流この映画の見方

この映画は「Don’t think feel」な映画ということで心して見ました所、良い感じの映画でした!冒頭、つながれていた牛がなんとなく逃げ出して、「へー。牛って結構走れるんだな・・・」なんて思いながら、様々なエピソードがつなぎ合わさってゆく映像を見てゆくと「へー。」とか「ふふふっ(笑)」「何?????」「いいねぇ・・」と感じるにまかせて見ていたら終わっていたという。

私の場合、原題「Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives」(前世を思い出せる男ブンミおじさん)というのを頭に置いて見ましたので、冒頭の牛や、途中の唐突に切り替わるナマズなんかのエピソードに対して「おっ来たな」という心構えが持ってで楽しみやすかったと思います。全く準備無しに見たらびっくりするかもしれません・・・

例えばバス旅行の帰り道に、車中で見せたらクレームが来ると思います。

役者さんたちと会話の面白さ

この映画が素晴らしいと思ったのは、役者さんたちの立ち居振る舞いです。冒頭紹介したインタビューでも出てきますが、スタッフみんな仲良くなって一緒に映画をとってゆくというプロセスからなんでしょうか。独特のぎこちなさ、とつとつとした感じが見ているだけで幸せになります。

『ブンミおじさんの森』アピチャッポン・ウィーラセタクン監督インタビュー

そんな役者さん達の会話も面白いです。食事をしていて、死んだ奥さんが現れて「フハッ、」と成るけどすぐに「水飲む?」なんて聞いたり、疾走した息子がアジアのチューバッカみたいになって出てきたのに対し「毛が伸びたね」とか。

登場人物の中で、私が特に好きだったのは、妹の息子トンです。なんだか凄く優しい青年なんです。ほんと良い奴。最期はなぜか坊さんになってました。

見た後に数日間感ふわふわと考える

この映画見た後数日に渡ってジワジワきます。ふとした時に、それぞれのシーンが思い出されて来るのですが、その時間がなんともいい感じなのです。何度も作中の優しい雰囲気を味わえます。

隔たりを曖昧にしてくれる優しさ

「死」について描いている映画なのですが、それが凄く身近に感じます。思えば「死」はこの世と隔たりがあって、見たことがないから怖いです。でもこの映画の中では、幽霊と話したり、前世を見たりその隔たりを曖昧にしています。

この映画はそういう境界線をどんどん取っ払っていくシーンが沢山出てきます。人間と森、人間と動物が重なり、生きている人間と死んだ人間が重なり、離れた時間が重なり、ひいては、自分自身も2つに分かれて同じ空間に重なります。

トンをはじめ登場人物達は、そういう重なりにはじめは驚くけれどすぐに調和してゆく。このプロセスを見ている私はなんとも言えない優しさを感じます。この映画を見ることで私の中にある様々な境界線をいい意味で曖昧にしてくれます。

映画の中で最も「?」だった、突然静止画に切り替わる、類人猿と若者たちのエピソードでは、はじめは類人猿を捉えているけど、途中肩を組んでピースしている写真が映し出されます。これも境界線が取り払われたという表現だったと思うと面白いです。

POPな感覚

エンディングはこれまた唐突にPenguin Villaというタイのバンドの曲が流れ出して終わります。この曲を聞いてこの映画のもう一つ好きになった理由が思い当たりました。POPなんです。

森の色も独特の深い緑と明るい緑が混じっていて大好きでした。そのほかナマズやアジアンチューバッカなどのキャラ達、登場人物達、若い感覚にあふれていると思いました。

タイに行く機会がありますが、バンコクや現地の町では驚くほどカッコイイスポットや物に出会います。そんな感覚がこの映画の中にも確実に息づいていると思います。

Penguin Villa – Acrophobia (OFFICIAL MUSIC VIDEO)

ということで、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督、好きになりました。ちなみに上記のこの映画で良いなと思った事は「バンコクナイツ」でも感じた事でもありますよー。

以上「アピチャッポン・ウィーラセタクン監督「ブンミおじさんの森」を見た感想(ネタバレ)」でした。

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