「複製された男」久々DVD借りて観た映画に自分が出てた・・(ネタバレ)感想

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こんにちはエルチ(@elchi3000)です。
ここ最近はドゥニ・ヴィルヌーヴ週間ということでまずは「複製された男」をNetflixで見ました。

監督 ドゥニ・ヴィルヌーブ
製作 ニブ・フィッチマン /M・A・ファウラ
製作総指揮 フランソワ・イベルネル/キャメロン・マクラッケン

キャスト
ジェイク・ギレンホール アダム/アンソニー /メラニー・ロラン メアリー
サラ・ガドン ヘレン /イザベラ・ロッセリーニ キャロライン

ストーリーはこんな感じ。

何も刺激のない日々に空虚なものを感じている、大学で歴史を教えているアダム・ベル(ジェイク・ギレンホール)。ある日、何げなく映画のDVDを観ていた彼は、劇中に出てくる俳優が自分自身とうり二つであることに驚く。彼がアンソニー・クレア(ジェイク・ギレンホール)という名だと知ったアダムは、さまざまな手を尽くして彼との面会を果たす。顔の作りのみならず、ひげの生やし方や胸にある傷痕までもが同じであることに戦慄(せんりつ)する。


複製された男(ENEMY)(2014)

★★★★☆ 85点

好きでした!

ヴィルヌーブ監督の「ボーダーライン」でも見られた俯瞰ショットを多様したトロントの街は硬質で緊張感に満ちてます。その中でジェイク・ギレンホール×2、メラニー・ロラン、サラ・ガドンがもんもんと不思議な物語をを進めてゆきます。バイオレンスはありませんがむっつりエロさと、奇想天外な展開とミステリアスな緊張感で目が離せなかったです。この映画はストーリーの意味はすぐには解らずとも、それも含めて魅力に満ちた映画にかんじました。90分台なのに冗長な感ありとおっしゃっている人もいらっしゃいます、私はワンシーンごとに食い入るように見てしまいあっという間でした。

やっぱり何を言おうとしているのか?どは気になりますので、よーく考えてからネット上を検索しながら読み解いて、ふむふむ、なるほどなと思いました。

さっそくですが

ここからはこの映画を見た人向けです。ネタバレ入ります。

原題の「ENEMY」で海外版の情報を色々見てゆくとだんだん分かってきて面白かったです。

日本の観客は一番この映画を理解しにくい事になっていますよね。なぜか日本向けの題名からしてミスリード情報となっております。「複製された男」・・・コピー人間が出て来るSFなのかな?と思ってまいます。鼻を押すと人形みたいになるんじゃ・・・・と、それでいて日本版コピーが「脳力が試される・・・」ですから、ちょっと意地悪だと思います。

で、オリジナル版のイメージ(以下)を観ると、「えっ。わかりやすい・・・」これは脳内の出来事、つまり自分の頭の中で作っている物語であることがわかりやすく示されています。

この物語の主人公にとっての敵つまり自分そっくりのアンソニーの存在は自分自身が作っている。なぜ自分自身の分身が登場させてまでこんな壮大なエロ話を作り上げたかというと、上の絵の中にもある蜘蛛が表現するものへの畏怖や嫌悪があります。

劇中で何度も出てくる蜘蛛。特に巨大な蜘蛛がトロントの街に現れるシーンは強烈でした。なんだか「ミスト」のでかい何かを観た時の様な気持ちにさせれました。

このクモどっかで見たことが有るよな・・・・と思っていると、六本木にいるやつでした。情報によると、この蜘蛛のモデルは六本木ヒルズにある蜘蛛の像でルイーズ・ブルジョワ(Louise Bourgeois)の”ママン(Maman)”という彫刻作品とのことです。

mamanは世界中に点在しているみたいです。

作品名の通り「ママン」は母を表現した蜘蛛の彫刻で、真下から観ると卵を宿しているんですよね。しかし、ヒルズのもそうですが、見た目かなり怖い感じです。この蜘蛛の下に入ると何か、守られていると同時に支配されているようにも感じます。ルイーズ・ブルジョワ自身、母親に対しては複雑で強い感情を持っていてそれらを表現した作品なのです。

この映画は母の電話から始まり、最後は妊娠している奥さんを追って入った部屋で蜘蛛を見て終わります。主人公は二人の母親である女性たちに対峙していて、そこから逃れたくて妄想をふくらませる。その頭の中を垣間見ているのが私達観客というわけです。

この観点から映画を考え直すと随所にヒントが有ったことに気が付きます。自由になりたい主人公、それに対して複製男が羽振りの良い俳優だったり、スズキのバイクをかっこ良く乗ったりしているのも妙に納得です。映画を読み解くこと事態が面白い映画だと思いました。

そうして考えていると、この映画は、「中年の危機」についての映画か?はたまたマタニティブルーの男版か?と思いますが、最終的に私が思ったのは「いや!オヤジのエロ願望、浮気願望からくる妄想であった」と思い返しました。

なんでも症候群にしてしまう日本には「男のマタニティブルー」 → 「パタニティブルー」なんて言葉も有るみたいですが、所詮それもエロ願望、浮気願望の発露では?なんて思わされました。

以上「複製された男」中年の危機?パタニティブルー映画?いや単なるエロ妄想の話という感想でした。しかし中年のおじさんの妄想を、このような魅力ある映画にしてしまうヴィルヌーブはやっぱり凄い監督だと思いました!