アスガー・ハルファディ監督「別離」(ネタバレ無し)感想

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今年6月には「セールスマン」が公開されたかなり高い評価をえております。アスガー・ファルハディ監督間違いない作品をここまで取り続けている怪物っぷりに驚嘆いたします。

そこで2017年7月はアスガー・ファルハディ月間ということであらためて過去作を見なおしました。今回は2011年の映画「別離」です。

スタッフ
監督 アスガー・ファルハディ 製作 アスガー・ファルハディ 脚本 アスガー・ファルハディ 撮影 マームード・カラリ 編集 ハイェデェ・サフィヤリ

キャスト
レイラ・ハタミシ ミン /ペイマン・モアディ ナデル /シャハブ・ホセイニ ホッジャト / サレー・バヤト ラジエー /サリナ・ファルハディ テルメー /

別離 (2011年)(123min)
★★★★★ 90点

 当時DVD化されてすぐに見て、面白さに驚愕した覚えがあります。イランと言う国について全く知識が無かった自分ですが、彼の国の風習や環境に驚きながらも、その中でとてもリベラルに生きる、美しい夫婦に共感をおぼえながら見ました。

 しかし、結婚14年目で11歳の長女とアルツハイマーの父の介護をしながら暮らしており、夫婦は離婚調停中。お互いの考え方の相違ですが、事件をきかっけに決定的なものになってゆく様は恐ろしい限りです。

 しかしアルファディ監督、40歳でこの映画を撮っているんですね。「ある過去の行方」や「セールスマン」も夫婦間での事件を題材にしておりますが、監督はほぼリアルタイムに人生を歩みながらこれ等の映画を作っているのが心底すごいと思います。

  登場人物達が皆が心に残る存在感を示してきます。その中の一人、娘のテルメー役は、監督の実の娘サリナ・ファルハディが演じており監督の映画狂っぷりを感じてしまいます。

 今回改めて見返してみて、監督のその場にいるようなドキュメンタリックな演出も冴え渡り、イランという国、イスラムという異なる風習と、夫婦に対する共感が複雑に物語を面白く緊張感の有るものにしてゆき、終盤の息を飲む展開となります。2回め見終わってまた、多くのことを考えさせられ、心を揺さぶられ続ける作品となっています。

「彼女が消えた浜辺」はプレミア価格で売買されているような状況でまだ未見です。見たくて仕方がない状況なのですが。その他の現時点での監督作の中で最高なのがこの「別離」だと思っています。