暗闇とパステルカラー。『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』感想

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こんばんはエルチ(@elchi3000)です。ゴールデンウィーク中、1日自分の自由になる日をつくれました。この機会に自分に何がしたい?自問したところ、『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』4Kレストア・デジタルリマスター版が見たい!との声が心の奥底から聞こえてきましたのでシネマート新宿に見に行ってきました。なんせ3時間56分もあるので休みの日にゆっくり見ることができて良かったです。

ストーリー
61年夏、14歳の少年が同い年のガールフレンドを殺害するという、台湾で初の未成年による殺人事件が起こる。不良少年同士の抗争、プレスリーに憧れる少年の夢、大陸に帰りたいと願う少年の親世代の焦りと不安を描きながら、当時の台湾の社会的・精神的背景を浮き彫りにしていく。

監督 エドワード・ヤン
製作 ユー・ウェイエン
製作総指揮 チャン・ホンジー
脚本 エドワード・ヤン/ ヤン・ホンヤー

キャスト
チャン・チェン 小四(シャオスー)張震 /リサ・ヤン小明(シャオミン)/ワン・チーザン王茂・小猫王(ワンマオ/リトル・プレスリー)/ クー・ユールン 飛機(フェイジー)/タン・チーガン小馬(シャオマー)


『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(1992)(Brighter summer day)
★★★★★(100点!!!)

素晴らしいです。大好きです。オールタイム・ベストにランクインする映画でした。

約4時間休憩無しでぶっ通し、シネマート新宿は70%の席が埋まっていましたが、途中席を立つ人はお手洗いも含めほぼ無でした。私も4時間長いと感じませんでした。それどころか好きすぎて途中後、何時間残っているんだろう?終わらないで欲しい!という思いが湧いてきてました。

人生の1日を費やすに値する映画 byニューヨークタイムス

その通り。素晴らしい1日になりましたよ!

エドワード・ヤン監督の映画は「ヤンヤン夏の思い出」をずっと前に観た限りで実のところほとんど覚えていないので、今回この映画を見て監督の映画の素晴らしさに驚きました。ストーリーや役者さん達も素晴らしく、書きたい気持ちはたくさんあるのですが、この映画に対する愛を皆様多く語っていらっしゃるので、この映画についての私の駄文をあえて残すとしたらと考え以下記事といたします。

暗闇とパステルカラー

印象的なのは暗闇のシーンが多いことと、それに対して昼間や室内ではポップとも言える色彩豊かなシーンが対象的にでてきます。

暗闇のシーン
映画冒頭での主人公が通うのは夜間学校での抗争シーンで、登場人物も多いし「何が起きているのかな?!」と心配になりましたがこれも物語が進むに連れてキャラクターの輪郭が徐々に分かってくる楽しさを感じる仕掛けでもあり。後々の証言によって「そうだったのか!」と主人公が感じている驚きを共有できる用になっております。また、夜の暗さは観客を当時の現場に引き込む絶好の装置として、機能しています。物凄く上手いなとお思いました。

▲ 闇の中からバスケットボールが飛んでくる。そして姿をあらわす相手。

そして闇の中リヤード場を舞台とする殴り込みシーンは闇によって見えない部分が緊張感と恐怖を増してこれまたすごいシーンになっておりました。
パステルカラー

そして打って変わって、昼間のシーン、小公園や音楽界シーンのポップさはエドワード・ヤン監督の超かっこいいセンスを感じます。印象的なのは下の写真のようなパステルカラーです。ちょっとサンリオ的なファンシーさを感じてしまうくらい凄く綺麗でこの色を4Kデジタル・リマスター版で見れて本当に良かったと思います。

この、「闇とパステルカラーの混在」は今までの映画で観たことが無かった新鮮な感覚を受けると同時に、カッコイイ!と思いました。今思うとその感覚はヒロインの小明(シャオミン)そのものを表している様にも感じます。ダークだけど凄く可愛い・・・4時間フルに使ったツンデレに心かきむしられました!
でも考えてみると十代の頃は、男子から女子を見ると闇とファンシーが同居した不思議な生き物に見える時ってあった気がします。男は「俺が守ってやるぜ!!!」とかイキがっておりますが、女子のほうはずっとドライだったように思います。

暗闇の部分は傑作ギャング映画級で、パステルカラーに切り替わった時の画面は凄くポップ。エドワード・ヤン監督。この格好で映画撮ってたらこんな映画になるんですかね。

4Kデジタル・リマスターによる画面が物凄く綺麗でこの機会に劇場に見に行って本当に良かったです。この映画をリストアして公開してくれたスコセッシ監督・ばんざい!です。