マーチン・スコセッシ監督×日本。映画「沈黙 −サイレンス−」感想。

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2017年劇場で見た映画3本め、「沈黙」をららぽーと富士見で見てきました。先週は沈黙週間と称して「沈黙」漬けの日々を送り、満を持していってきました。今回の記事では、スコセッシ監督と、遠藤周作氏の原作、塚本晋也監督、浅野忠信さん、イッセー尾形さんについて書きたいと思います。

沈黙 −サイレンス−
監督     マーティン・スコセッシ
製作    マーティン・スコセッシ    エマ・ティリンガー・コスコフ    ランドール・エメット     バーバラ・デ・フィーナ

キャスト
アンドリュー・ガーフィールド/セバスチャン・ロドリゴ
アダム・ドライバー/フランシス・ガルペ
浅野忠信/通辞    キアラン・ハインズヴァリニャーノ
リーアム・ニーソンクリストバン・フェレイラ 窪塚洋介/キチジロー
イッセー尾形/井上筑後守  塚本晋也/モキチ 小松菜奈/モニカ

★★★★☆ 90点

マーチン・スコセッシ監督が日本の小説を映画化

あのマーチン・スコセッシ監督が、遠藤周作氏の「沈黙」を撮る!しかも魅力的な日本人キャストをたくさん配して・・・! ついにこの日に立ち会えたという気持ちです。「タクシー・ドライバー」の、「ミーン・ストリート」の、「グッド・フェローズ」大好きな監督が、日本に大接近する。この事実だけで胸いっぱいでございます。

冒頭にも書きましたが、心して見ようと多い、原作、パンフレットやキネマ旬報等、色々と読んでみました。

監督は、1988年に原作の「沈黙」を読んで魅了されたそうです。それから何度かリライトをして、ついに映画化。宗教観の対立や、物質にあふれた、今だからこそ、「沈黙」を映画として作り上げたそうです。

窪塚さんがインタビューでおっしゃっていましたが、最初からスコセッシ監督自身で企画を立上げ作り上げた作品は「タクシー・ドライバー」「レイジング・ブル」「沈黙」の3作のみだそうですよ。

原作小説と遠藤周作さん

それほどまでに監督を魅了した「沈黙」という小説を読み、それを書いた遠藤周作氏についてもこの機会に触れてみたいと思いました。

まず小説の「沈黙」ですがすごく面白いです!文庫でもそう厚くない本なのですが、非常に重いテーマにかかわらず、考えていたよりも驚くほど読みやすいものでした。

なぜか・・・? ともすると重いテーマばかり語られていますが、そこにもう一つの視点があるからだと思いました。

遠藤氏がおっしゃるのはこの物語は2つの「沈黙」を描いているということです。1つ目は、今回の映画のコピーにもなっている神はなぜ「沈黙」したままなのか?という事について。

もう一つは踏み絵を踏んでしまった、つまり「転んだ」人々の物語を書きたい。それらの人々の言葉はほとんど「臭いものにはフタ」となってしまい後世に残されていない。すなわち歴史の中で「沈黙」した人々の物語を書いたそうです。これはスコセッシ監督が長年描いてきた人々にも通じているとおもいました。

このような原作の魅力が良くわかったのが以下の公演音源でした。

【告知】 が小説『 』を刊行したのは1966年3月。その3か月後に行われた講演「『沈黙』について」の音源を無料公開します。3月末までの期間限定。作家の肉声をじっくり聴くと、小説も映画もより深く愉しめますよ! (茶)

上記の講演会でも遠藤周作さんは小説はあくまで説であって、大説ではない。多くの人々がそうであるように、答えを探しながら、迷いながら生きるために踏み絵を踏んでしまう人の葛藤を描こうと思ったと語っています。

だからこそ私のような読者は「沈黙」という小説に自分を投影し、自分にとっての踏絵とはなにか?またそれを踏んで生きているということに思い至るのだと思います。

また遠藤氏ご自身も「沈黙」や「海と毒薬」についてのイメージから、非常に厳格なタイプの人かと思いきやユーモアあふれる方だったんですね。上記の講演会の会場は以外にも笑いに包まれるものでした。

塚本晋也さん/モキチ

劇中のモキチを演じる塚本晋也監督には、静かで優しいけれど、悲しく、力のある目つきに圧倒されてしまいました。そしてあの海岸の磔シーンは目に焼き付き、この先ずっと忘れないシーンだと思います。

塚本監督がオーディションに行った時のこと、スコセッシ監督は「あなたは「6月の蛇」の塚本監督ではないですか!?ここで何をしているのですか?」と驚いたそうです。

塚本監督は2009年2月にスコセッシ監督に合ってから2015年3月に海辺の磔シーンを撮影するまでをキネマ旬報で「沈黙」巡礼日記として書かれております。この記事は素晴らしいです!

この中でスコセッシ監督とのやり取りについて克明に記されておりますが、自身の監督作「野火」での劇中の役を自分が演じる事を決めた事、塚本監督のスコセッシ監督への思いや、手紙等お二人の友情が垣間見れてとても素敵だと思います。

スコセッシ監督は塚本監督の「鉄男」と「6月の蛇」が好きとのことですが、終盤、黒沢あすかさんが出てきて嬉しかったです。黒沢さんの演じる日本人女性の存在は終盤、希望を感じつ重要な役割だと思います。

浅野忠信さん、通辞

もしかするとこの映画に一番出たいと思い、力強いアプローチし続けたのが浅野忠信さんだったのかもしれません。はじめはキチジロー役でオーディションに出て監督と有意義な時間を過ごしたのにもかかわらず、ダメだった。

その後諦めず、通辞役に決まっていた渡辺謙さんがスケジュールが合わないとなると、再びオーディションを受け、ついにこの役を得た。このエピソードを聞いて浅野忠信さんが更に好きになりました!

また、尊敬したのは英語の習得についてです。通辞役ということで、しっかりした英語を話せなければいけない。様々なハリウッド映画に出る中で、本気で英語を学んだそうです。 その勉強法がかなり気になりますが、そうして学んだ英語に更に磨きをかけて、この役に臨んでおります。チャンスってこうやって掴むものなんだと教えていただいたような気がします。私も仕事柄、英語を使わなければならない場面があり、今年もう一度本気で英語を勉強してみようと思いました。

イッセー尾形さん、井上筑後守

私的に最高だったのが、イッセー尾形さんです!!!!!

▲ 「お・ま・えは何を、、YOU!!」

「太陽」での昭和天皇の演技をみてスコセッシ監督が注目し、オーディションテープを送ってOKとなりこの映画に参加されたそうです。

見終わってすぐ、すごかったのでネットを検索してみると、やはりアメリカでも絶賛でLA批評家協会賞にて、助演男優賞で第2位を受賞してます。

怖い、けれど魅力的、すごく説得力ある井上筑後守を演じております。尾形さんをもっと見たい!と思いながら映画をみていました。

尾形さんからの沈黙にについての話は上記の音源がオススメです。

浅野忠信さんとは打って変わって、「日本語のニュアンスで、英語を話していた!? 英会話はできない、練習相手の顔色を見ながら練習していた」等まったく考えもしなかったエピソードが語られています。

また、イッセー尾形本人公式ホームページのNEWSのところにも色々書かれていますが、この自然体でスコセッシ監督の映画に出てあの演技。すごい人です!

他にもキチジローを演じた窪塚さんのこととか、アンドリュー・ガーフィールドさんの事とか色々脳裏に残っていますが、大好きなスコセッシ監督がここまで日本に接近してくれたことが夢のような映画で、それに答えた日本のスタッフ、今回紹介したキャストの皆さんが素晴らしかったです。私にとって忘れ得ぬ映画となりました。

以上【マーチン・スコセッシ監督×日本。映画「沈黙 −サイレンス−」感想。】でした。