空族がタイで映画を作って物凄い作品に…!「バンコクナイツ」を見てきました。(ネタバレ感想)

シェアする

こんにちはエルチ(@elchi3000)です。2017年2月27日、テアトル新宿で「バンコクナイツ」を見てきました。

2013年にオーディトリウム渋谷で「サウダーヂ」を見て空族が大好きになりました。彼らがタイで映画を撮ったと聞いて公開を待っていたところ昨年11月、彼らのホームグラウンド甲府で凱旋上映が行われるということでしたので行ってきました。その場で完全にやられてしまい、今回2回目に臨んだ形です。

バンコクナイツ
スタッフ 監督 富田克也 /脚本 相澤虎之助 富田克也/撮影向 山正洋 古屋卓麿

キャスト スベンジャ・ポンコン ラック/ スナン・プーウィセット ナット/
チュティパー・ポンピアン リン/ タンヤラット・コンプー カイ/
サリンヤー・ヨンサ ワット / 富田克也 オザワ /伊藤仁 ビン
長瀬伸輔 しんちゃん/ アピチャ・サランチョル ウィット/川瀬陽太 金城/ 菅野太郎 菅野 / 村田進二 富岡


★★★★★ (満点!)

2回目を見て更にこの映画が好きになりました。1回目は「とにかく凄い映画を見た!」という衝撃と余韻を味わうだけで消化しきれていませんでしたが、今回は、この映画の凄さが素晴らしさを少し考えるに至っております。

現場がスクリーンに。

私も仕事でタイに行ってます。私は、劇中しんちゃんが嫌ってる「スクンビット当りに群れてる日本人」ということになります。映画の中のバンコクのシーンは見たことがある場所、かき捨てたはずの恥、多数。「ここまで映画で出しちゃうんですね…」

よくぞ日本人がここまで撮れたものだと思います。よくもまあタイの人々が協力してくれたものだと思います。さすがは空族です。パンフレットで行友太郎さんが書いてますが空族映画製作はチョッケツ作戦。「ある瞬間においては敵対関係にあろうとも即座につながるあり方」それをチョッケツと呼んでおります。チョッケツは例のバイクのエンジンを強制始動させるあれです。日本人とタイ人の心を直結で始動させてしまったんですね。

「地獄の黙示録」

映画やメディアってなんでこうも現実をそのまま描かないんだと感じることがありますが、空族の映画はちがいます。役者やスタッフは現場で家族レベルに親密になりながら、撮影を進めてゆくその制作メソッドから、途方もなくリアルな空気を劇場に再現しています。まるでドキュメンタリーを見ているようです。

「サウダーヂ」では日本の地方都市の現場をスクリーンに見事に映し出した空族ですが、今回はバンコクの日本人とその周辺のタイ人たちです。最近の食傷気味のお決まり映像「素晴らしきニッポン。良き日本人」のイメージからは程遠い、快楽主義日本人のが作った、バンコクの一角をスパッと切り取って見せてくれます。こっ恥ずかしく、目をそむけりますが、これが「今そこにある現実」なんだぞって突きつけてきます。そしてそれを見るのはやはり面白い。

昨年11月、甲府「桜座」でのバンコクナイツ凱旋上映の同時上映は「地獄の黙示録 特別完全版」だったわけで私も久しぶりにこの映画を見返してみました。その上で「バンコクナイツ」2回目を見ましたが、「バンコクナイツ」は日本人にとっての「地獄の黙示録」であると思いました。かの映画はアメリカ人達が持ち込んだ戦争が泥沼化、そこに自ら再訪し戸惑い狂ってゆく話です。しまいに映画を作っていたコッポラ自身も狂気を帯びてゆくという・・・

チョッケツにより救われる

しかし「バンコクナイツ」では画面から責められ続けているようなキツイ感覚は続きましせん。地獄を作り出しておいてなお、厚顔無恥に迫る日本人は、タイ人からするとさぞかしうざったい存在でしょう。ところがこの映画では、現地の人々活き活きと役を演じ、故郷や自分たちの文化をさらけ出してこの映画をが作られたという事実は、映画を見ながらにして救われる思いです。

映画秘宝のインタビューを読むと、映画出演をバンコクの人々に頼んでも「またAVでしょ!?」なんて話が終わってしまい、長い時間をかけて、じっくり趣旨を説明して、やっと協力を得たそうです。そうしてできた現場の空気があるので、地獄を見ながらも、どこか救われているような不思議な感覚を持ってこの映画を見続けることになります。そしてそんな空族のチョッケツに応じるタイの事をを猛烈に好きになり、興味をわかせてくれます。

経験する映画

イサーン、ラオスを舞台にした中盤は、素晴らしいビジュアル、音楽、人々すべてがその興味を見事に満たしてくれます。オザワは人々にとどまらず、霊や自然ともつながってゆきます。旅が続き、再びバンコクへ戻る過程で何が楽園で何が地獄なのか考えさせられ、今も考えております。

ラオスのパート、パタヤのパートそして再びバンコク。今振り返っても様々な意味を魅力を発散しながら、意味を内包するあっという間の濃すぎる3時間、2度目にしてその魅力の一端を味わいつつも、見たと言うより、「経験をした」ように感慨が大きな固まりが私の心に居座っています。

冒頭★★★★★!なんておこがましくも★をつけさせて頂いていますが、通常の映画が良くできているとかそういう感覚じゃないので「規格外の満点」とさせていただきました。

スクンビット辺りで群れている日本人の私ですが、これから、現地の仲間とのチョッケツ作戦で頑張って行きます!

↓このパンフレット。ものすごい情報量と、解説が素晴らしいです。必読です。

空族の作品はDVD化されませんので・・・・「地獄の黙示録」を貼っておきます。