ダークな埼玉県北部映画「ビジランテ」入江監督の見事な凱旋。

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劇場で見ることができなかった映画「ビジランテ」を見ました。

入江悠監督は「サイタマノラッパー」で「深谷市」いや、「ふくや市」を擁する我等が埼玉県北部映画好きの誇りです。地元では熊谷高校の卒業生としても有名です。

サイタマノラッパー第三部当たりから地方のダークサイドの描き方が素晴らしいなと感じて、昨年の「22年目の告白で 」韓国映画とタメを貼れるダークっぷりで、その力量を目の当たりにし今回の「ビジランテ」の期待が高まっていました。

「ビジランテ」

★★★★☆ 85点

最高でした。県北感は恐ろしいほどに正確に切り取られていて、県北出身の私は特別な映画体験が出来ました。アウトレットモール誘致の話はまさに現在進行中ですし、カラリとした畑と送電線などの風景も見慣れたものです。

同じく地方のリアルを描いた傑作映画、空族の「サウダージ」を見て甲府の人達を羨ましく思っていましたか、埼玉県民としてはこの「ビジランテ」で溜飲を下げました。それだけに公開時の県内上映館の、少なさには改めてガッカリでした。まあこの内容だと確かに色々と不都合があるのはわかりますが、あくまで映画なのに・・・しかしそんな所も県北らしいかもしれません。

しかしそんな小心さと狂気が同居するのがこれまた県北。甘く見ていると相当怖い目に会うだろうし、怖い事件もけっこうあります。かくしてこの映画はそんな県北の闇を惜しむこと無くさらけ出しながら暗い結末に向かってゆきます。

ビジランテでは絶望的な幼少期を送った3兄弟がそれぞれ県北の暗部との格闘し見るものを釘付けにしてゆきます。一郎の死んだ目、二郎の市議会議員としての立ち回りと黄色いウィンドブレーカーを着た自警団活動が思わぬ方向に転がりだす展開。

中でも三郎、桐谷健太さんはこの映画を自身の代表的作品とまで言っていますが、本当に素晴らしい演技でした。助演としてはラッパーの「般若」演じる地元のやばい人は圧巻で。素晴らしい演技と恐ろしい存在感。取り巻きの人たちの嫌な感じも最高でした。これから自分はこういった人たちと、ひたすら会わないように暮らしたいと思いました。

これだけのキャストを、この題材で県北に連れてきて、重量級のビジランテを撮った入江監督改めて県北の誇りです!